rhapsody in blue  ― 0 ―



例えるなら、そう、雨だ。
夕立のような激しい雨ではなく、穏やかに、土の奥の奥にいる名もない生物さえ包み込むような、優しく暖かい、雨。

あいつは、そんなやつだった。



いつだってあいつとオレは喧嘩した。
いや、喧嘩ならまだいい。喧嘩にもなりゃしない。
オレが何を言っても、何をしても、あいつはただニコニコと(時々困ったように)笑っていた。
それがいつもオレを無性に苛立たせ、内に渦巻く感情が爆発するのだ。
オレばかりが空回り、1人になるとひどくそれが虚しかった。
あいつとの思い出は、苦虫を噛み潰したようなものしかない。


それでも思い出すたび胸の奥がきゅっと絞まり、泣きたいような、笑いたいような、切ない甘さがオレを襲う。







あいつがいなくなって、もう、3年が経つ。




今でもオレはふとした瞬間にあいつの気配を感じる。
窓の外を見下ろせば。廊下の角を曲がれば。あいつの部屋のドアを開けた、その先に。

オレの横に。



消えてからもお前はオレをこんなに苛立たせるのか。
勘弁してくれ。







お前の気配がそこら中に散らばっていて、酷く苦しい。